靉霧の駄文書庫

あちこちで書いてきた駄文を集めて格納中。そのため、記事ごとに口調や考え方が変わっています。また、現在工事中につき、お見苦しい点が多々あります。あしからず。

このブログについて

  「靉霧の駄文書庫」(以下「当ブログ」)は、靉霧が書き溜めた駄文を格納している趣味ブログです。 格納している駄文の投稿日は、初出当時のものです。そのため、記事番号の順番と投稿日の順番は一致しません。また、記事ごとに言葉遣いや考え方が異なっていますが、これらは初出当時のものを尊重してのことであり、現在の靉霧の言葉遣いや考え方と一致しているとは限りません。 こうした事情から、当ブログではトラック...

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墨染めの幻夢(ゆめ)

 私は、大浴場にいた。 しかも、どこぞの山中の温泉宿らしい。広々とした浴室には、大勢の女性が思い思いの場所で寛いでいる。彼女らの向こうには、壁をぶち抜いた大きなガラス窓があり、緑の茂る山並を見下ろし気味に眺められる。遥か彼方には、より高い岩ばった峰々も微かに見える。(ああ、そうか。まだ山を越えるんだ。でも、疲れたし、足が汚れたから、ここで休憩しようって決めたんだっけ) 幽玄な峰、生き生きとした山並...

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屁理屈女の無邪気な反論

屁理屈女の物語  -

 田舎であれ、都会的な競争思想の持ち主はいるものだ――と、空閑聡子が初めて知ったのは、高校3年生の冬だった。 各学年に700人は在籍しているマンモス学園にて、彼女は「異色優等生」として既に名を馳せている――のだが、彼女自身はまるで知らない。本人の前で、「ほらほら、アレが本校名物、異色優等生よ」なんて語る者がいないから。それでも、1年時には全校集会に学生服を着込んできて、注意した校長を屁理屈でやりこめたと...

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空に近くなれ 第2回

空に近くなれ  -

第2回 ムナしさのどん底へ 今思い出しても、我ながら見事なダイブだった。大地という崖っぷちから空へと飛び込んだのだから。そして、「空」というものがじつは巨大な水たまりであるのだと、初めて知った。 叩いた水面を通して眺めているのと同じく、景色はぐにゃぐにゃ歪んで揺れている。頭上の雑木林も容赦なく歪み、空に沈めば沈むほど遠ざかり、爽やかな青色と水面の煌めきだけに染まっていく。 苦しくはない。 水飴の中...

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だれかがだれかに「まる」

 ぼくのママは、いつもむずかしいかおをしています。「ママって、ダメねぇ。こんなこともできないんだもの」 ひとりでそういって、ときどきないてます。 ぼくには、なにがダメなのか、わかりません。 でも、ママがなくのは、いやです。 ぼくも、むずかしいかおをしました。くびも、よこにふりました。「そうよね、やっぱりダメなママよね」 そうじゃないのに。 ぼくは、またくびをふってから、あしでたちました。 ほら、す...

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智以子(ちいこ)の記憶 その4

その4 人間という生き物は そう言えば、あなた、人間なのよね? あの子と同じ、人間なのよね?  人間は、不思議な生き物ね。ちゃんと足があるのに、どうして自分で歩かないのかしら? 自転車だとか自動車だとか、奇妙な形の義足をわざわざ使って移動することが、そんなに魅力的なのかしら? 歩いている時、いろんなものが見つかるわ。獲物だとか、仲間だとか、心地よい風とか。それを楽しむのが、動物の特権なのにね。 そ...

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空と海の狭間に 第6章

空と海の狭間に  -

第6章 翌朝、ノアは城に出向き、王子アベルに彼の執務室で会見した。表向きの用件は、迷いの森の幻覚術についての相談、にしておいたため、白魔導師を代表して幼なじみリディアも同席している。「君らしくないね、嘘をつくなんて」 実際には空から落ちてきた青年カインに関する報告であることは、アベルとリディアには容易に予想できていた。それぞれ1人掛けのソファに身を沈め、正面の長椅子の真ん中に陣取るノアを訝しげに見...

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神様の居場所

「神様って、どこにいるのかなぁ……」 由美子は机上に肘を立て、頬杖をついた。正面の窓から吹き込む秋風が、束ねたレースのカーテンの裾を揺らして入り込み、肘の下のノートのページを捲ろうとする。そこには、由美子の創作物語が途中まで記されている。 剣と魔法の世界、悪い魔法使いに国を乗っ取られそうになり、王様は剣を、王妃様は魔法を武器に、平和のために戦う物語だ。出だしだけ書いて友達に読んでもらったら、面白そう...

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空に近くなれ 第1回

空に近くなれ  -

第1回 ソラへのダイブ 山間の町をどう走り抜けたか、よく覚えていない。家を飛び出し、母が通勤に使っている原付――膝を揃えて乗るやつにキーを差し込んだのは、確かだが。 町外れから小高い山へ続く道に入り、民家がぷつりと途切れた頃、やっと隣町へ続く道を走っていることに気づいた。周囲は雑木林で、紅葉して黄色や赤色に染まっている。まるで、山が着飾っているみたいだ。 疾走で切り裂いた風に混ざり、母の言葉が耳の近...

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乳白色の幻夢(ゆめ)

 嗚呼、神よ、何故我らを創り給うたか。 我らは皆、一様に食し、排泄し、地にありて空を仰ぎ、そして進む。 我らには体の大小以外に差別はなく、等しく生きる。 遠き祖先は母なる海に別離(わかれ)を告げた。 父なる神よ、彼方(あなた)を仰ぎ見ることを選んだゆえに。 我らは彼方の目から逃れるための殻を捨て、全身全霊をさらけ出す。 すべては、彼方の御心のままに生きるため! この世に生を受けた瞬間から、我らは常...

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幻想茶会 第9話

幻想茶会【未完】  -

第9話 美樹の昔語り ウチと涼子の付き合いは、中学2年の春からやったっけ。いきなり、涼子のほうから友達になってくれって、もう強引に迫られたんや。驚いたわ。 けど、正直に言えば、ウチは涼子のことを、小学生の頃から時々見かけてた。だってなぁ、涼子のやつ、その頃から「変な子」やったんやもん。 いっつも真面目くさった顔してて、冗談なんか言いそうにあらへんと思った。もちろん、ちゃんと友達の輪に入ってるみたい...

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TORAT(トーラ) §13

§13 死神の餞(はなむけ) 千明の卵細胞を基に製造された「人形」の肩を抱き、龍彦は八坂義肢コンサルティングの玄関へと足を踏み入れた。 コンクリートと人工樹脂を固めた建物には、無機質な白い空気だけが満ちている。命あるものの温もりとは、まるで無縁の気配だ。「君は、ここで、生まれたんだな……」 外の喧騒が届かないところまで廊下を歩いてから、彼は「人形」に呟いた。「はい。私は夫のために生きるべく、この先のラ...

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